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旅する小説「星の王子と砂漠の井戸」

第18話 <優の告白>


青と白に統一された綺麗な海辺の町。

私と優は一昨日の約束通りエッサウィラに来た。


マラケシュに比べると、ずいぶんとこじんまりした町で、

一日あれば旧市街全部を回れるくらい。



辺りは潮の香りが漂い、
ザザーンと防波堤に打ち付ける波の音が聞こえる。

これまでの街とはまた違った趣だ。


私たちは港の近くの魚の屋台が並ぶ場所に向かった。

炭火で焼かれた魚の匂いが食欲をそそる。



店頭に並べられたお魚をチョイスして焼いてもらうのだが、

私たちはイワシとエビ、カニ、あとよくわかならいお魚を選んだ。

「おいしい!」


焼きたてのイワシはシンプルだけど香ばしくて美味しい。


「あの……」


優が気まずそうに顔を覗き込んだ。


「何?」


「一昨日俺、変な事言ってなかった?」


一瞬考えて「『ごめん』って言ってたよ」と言った。


「そっか」



しばらくお互い黙って魚を食べた。



「俺さ、すげー女にだらしなかったんだ」


「うん」


「うちは親父がいつも仕事で不在がちでさ、
母さんにとっては俺が生きがいの全てで……。

俺、自分で言うのもなんだけどこんな顔じゃん?
親戚からも知り合いからも
『なんて可愛い子!』ってちやほやされて、
益々母さんは俺に理想の息子を求めてさ」


「うん」


「それでも子供の頃は母さんを喜ばせたくて
理想の子供になろうって頑張った。
でも成長するにしたがって本当の自分と母さんの求める俺が
かけ離れていくのが辛くなってきてさ。

俺が母親の理想から外れたら、母親の保ってきたものが
壊れるんじゃないかって気がして自分に嘘ついて」


優はそのまま言葉を続けた。


「その後も表向きは母親の理想通りの息子を演じてたけど、

いつしか女ってものに対して心が動かなくなって
裏で女の子を泣かせるような事しても何とも思わなくなって。
いや、むしろ泣かせる事で母親への反発心を発散させてたんだ」


私は黙って優の話を聞き続けた。


「また都合よく女の子が寄ってきてさ、

それもみんなルックスやステイタス目当てなやつばっかで、
誰も俺の事を見ていなかったし、みんなどうでもよかった。
言い寄って来るちょっと可愛い子と何となく付き合って、

飽きると連絡絶ってってのを繰り返して。
その中の一人がレイナだった」


「……」


「レイナは最初は優しくて可愛かったけど、
自分の話しかしなくて
『やっぱりこの子も同じだな』と思って、
それまでのように連絡を絶ったんだ。

でもその後もしつこく電話してきたりメッセージを送って来て、

最終的にはちょっと怖くなって電話もLINEもブロックした。

そしたらある日家の前にレイナが待ってて……」


優は小さく一呼吸おいて、言葉を続けた。


「俺は無視して家に入ろうとしたんだけど、

あいつ、『なんで連絡くれないの!』ってしがみついてきて。

俺とっさに『お願いだからもう別れてくんない?』って。

そしたらあいつ『別れるなら死ぬから』って言って……。

俺、『じゃぁ死ねば!』って言ったんだ」

この話をどんな気持ちでしているのだろう。

胸が痛かった。


「そしたらあいつ絶望的な目で俺を見て帰って行った。

その二日後、あいつが死んだって知らされた」


痛い、でもこの痛みは二人で分け合う痛み。


辛い話は誰かに聞いてもらいたい。


優の弱さを今、目の当たりにして、
それでも私はこの弱さを突き放す事はできない。

私の弱さと優の弱さ。
二人の違いってなんだろう?


私の少ない脳みそで考えてみた。

自分で乗り越える努力をせずに、

自分が負うべき課題を誰かに担ってもらう事で解消するのは依存だろう。
それは受け止める方もどこか重苦しく感じるものだ。

だけど自分が這い上がるために誰かの力を借りるのは、
依存じゃなくて手段だ。


そして這い上がろうとする人に手を貸すのは救済。

救済は痛みはあっても重苦しくなんてならないんだ。


悟史が



「このままではお互い駄目になる。

奈美は奈美の場所を自分で見つけなきゃいけない。

それには俺がいたんじゃ駄目なんだ」



と言った言葉が、今やっとわかった気がした。


優と私の違い。


優はもがいてあがいて必死で這い上がろうとしている。

その手立てとして今こうして私に思いを打ち明けた。


対して私はどうだろう?



今まで自分の頭で考えて行動して
”自分がハッピーになれる場所”を探した事があっただろうか?



何かある度に悟史にこぼしてすっきりしてただけで、
根本的なものは何一つ変わっていない。

そんなんじゃ悟史に愛想をつかされても仕方ないだろう。


「話してくれてありがとう」



私が言うと、優もほっとしたように微笑んだ。


誰かを動かすためや可哀想な自分に酔うのではなく、
純粋にこぼれてしまう涙は心の叫び。


優は表向きはモテモテ男子だけど、ずっと孤独だったのかもしれない。



自分から奪う事しか考えていない人を沢山見てきて、

奪う人たちから自分を守るためにどうしていいかわからないまま、

人を傷つけて自分も傷ついた。


だからこそ、奪う人にならないように、
一人でたくさんたくさん考えたんだね。


優ごめん、あなたは冷たい人なんかじゃないよ。


屋台を出て港の方に歩いた。


港にはたくさんの青い船が繋留されていて、

真っ青な空には白いカモメの群れが飛び交うのが美しかった。


何だろう?

今まで靄がかかっていたかのような心が、

さぁーっと晴れ渡るような不思議な感覚。



星の王子 第十八話


「あぁ、いつかこの風景の広告作りたいなぁ」

思わず口にした。


今の思い、気持ちがこの風景とリンクして、いつかこれを形にしたい。

そんなこと思ったのは初めてだった。

これまでは人に言われるままに広告の仕事に携わってきたけど、
誰かにこの感じ、伝えたい。


そんな私を優は目を細めて見ていた。


日本に戻ったらまた広告の会社に入ろうかな。


前ほど大手には入れないかもしれないけど、
小さい所だったら雇ってくれるかもしれない。

そこで今度はちゃんと自分の意思でやりたいことをやっていきたい。



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こんにちは!メズモロです!
キュートなモロッコ雑貨を、
真心をこめてお届けします!

モロッコを旅して出会ったモロッコの雑貨たち。
その可愛さに心を奪われただけでなく、
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生活の助けになるという事を知り、
2013年にショップを立ち上げました。
小さなショップですが素敵なモロッコ雑貨を通じて、
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