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旅する小説「星の王子と砂漠の井戸」

第8話<弱さがこぼれた夜>


18時。



ホテルのロビーで待っていると優が現れた。

「お店あったよ!カサブランカビールが飲めるっぽい」


二人はまた旧市街の中心あたりまで歩いてお店に入り、
向き合って座りながらチキンのタジンをつついた。


「私、彼氏にフラれたんだ」


唐突なの私の言葉に優は目を見開いたが、

「うん」と聞く体勢に入った。


「うち、母子家庭で両親は私が中学生の頃離婚したんだけど、

母は別れた後も父の悪口ばかりで……」


とりとめもなく言葉が出てきて、
重い話をしているな……と自覚はあったけど、

いろんな事情を抱えていそうな優なら
聞いてくれるんじゃないかって気がして話し続けた。


「お母さんはいつも『あんな人と結婚するんじゃなかった。

おかげで私は幸せになれなかった。

奈美はそんな風にならないようにちゃんとしなさい』って言っていて」


優は黙ってこちらを見ていたけど、私は言葉を続けた。


「私、お父さんの子供だしやっぱり似ている所があって、

それがお母さんにバレたら嫌われちゃうって思って、

嫌われたくなくてお母さんが期待する子供でありたくて、

お母さんの話は聞いてあげて、必死で勉強も頑張ってきた」


優は黙ってタジンをつついている。


「学校も仕事もお母さんに認めてもらえるような所を選んだ。

けど、どこかしんどくて……そういうの彼氏にいつもぶちまけてた」


「うん」


「そしたらもう会うのよそうって……」


「うん」


「『このままではお互い駄目になる。

奈美は奈美の場所を自分で見つけなきゃいけない。

それには俺がいたんじゃ駄目なんだ』って突き放された。

愛があるなら彼女の弱さは受け止めてくれるものだと思ってた」


「うん」

優、さっきから「うん」としか言わない……。

「結局仕事も辞めちゃったし何もない自分が情けなくて、
でも一人で抱えていたら潰れてしまいそうな時もあって。
ねぇ、強くなるにはどうしたらいいのかな?」

私は優に訪ねた。

「それは俺も知りたいよ。
俺だってそんなに強くない」

しばらくの沈黙の後、優が口を開いた。



「でもね、きっと視点が変わったら少し強くなれる気がする」

「視点?」

「うん、今はさ、視点が自分に向いちゃってるんだよ。
『お母さんや周りからどう見られてるのかな?』とか、
『彼氏さんにああして欲しい』とかって、
全部『相手がこっちを見る』視点じゃない?」

あぁ、確かにそうかも……。
ちょっとドキッとした。

「それをさ、受け身じゃなくて自分発信で
物事を見れるようになるといいのかも。
お母さんや周りがじゃなくて、自分がどう思うのか?、
彼氏さんに"してもらう"んじゃなくて、自分がどう動くか?
まぁ、口で言うのは簡単で、俺も全然できてないんだけど」

そう言って優はビールを一口飲んだ。

「たぶんうまくいかない時って、
自分で何か気がつかなきゃいけない事があるんだよ。

神様がね、『それじゃいけませんよ』って彼氏さんの口を通して

言っているんじゃないかって」


「それじゃ、私は何に気がつけばいいの?」


「それは誰にも教えられないよ。
自分で気づくしかないんじゃない? 彼氏さんの
『奈美さんは奈美さんの場所を自分で見つけないといけない』って

そういう事なんじゃないかな」


「わかるようなわからないような……」


しばし、目線を横にやって考えた後、優は話を続けた。

「わかんねぇけど、何でもいろいろやってみて、
甘いものも苦いものも味わって視野を広げたら、

いつか気がつける時が来ると思うんだよね。

その先に砂漠の井戸もあるんじゃないかって思ってる」


「砂漠の井戸……そうね、それが何なのかはわからないんだけど、

砂漠の井戸に辿り着いたらパズルのピースが揃うように、
全てが理解できるような気がする」


「うん」


そう言って私たちはビールを一口飲んだ。


店を出て、優にホテルまで送ってもらった。


ロビーの外には旧市街を見下ろせる広いバルコニーがあり、

私たちは酔い覚ましにバルコニーに出た。

昼間とはまた雰囲気が違って、
街にはオレンジ色の街灯が幻想的に灯っていた。


「きれいだね」



優も街を見下ろして言った。


「私の部屋あそこ! バルコニーのすぐ上なんだ!」


「へー、それじゃ、部屋からこの景色が見えるの?」


「そう!」


「いいなぁ、俺は安宿だから景色なんて見えないよ」



と笑った。


私も笑って



「それじゃ、おやすみ。 今日はありがとう。 また明日」



と部屋に戻った。


明かりをつけて部屋に入ると、窓に何か当たる音がして、

窓を開けて下を見ると、優が王子様みたいにひざまづいて

「ジューーリエッ!」とふざけていた。


さては奴も酔っ払っているな。


私も「おおロミオーー!!」とおふざけに乗っかった。


優は「あはは!」と笑って
「バイバイ!」と手を振って
私の視界から消えた。


心の中の鉛が少し溶けた気がした。



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